寒い季節になると、皮膚の乾燥を訴える人が増え、高齢になるほど、乾燥に伴うかゆみに悩まされる人も多くなる。かゆみが生じる際、皮膚では何が起こっているのだろうか。順天堂大学医学部附属浦安病院 教授の須賀 康(すが・やすし)さんに、そのメカニズムをきいた。
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冬になると、多くの人が皮膚の「かゆみ」に悩まされます。空気が乾燥して、皮膚の水分が失われると、かゆみが起きやすくなるためです。
皮膚の表面を覆う表皮の最も外側にあるのが「角層」です。角層は大変薄く、食品用ラップフィルムとほぼ同じぐらいの厚み(0.01〜0.03mm程 度)です。角層には3つの「潤い因子(皮脂膜、角層細胞間脂質、天然保湿因子)」があり、皮膚から水分が蒸発するのを防いだり、異物の侵入を防ぐバリアの 機能を果たしています。
◎皮脂膜——角層の最も外側を覆う被膜で、皮脂や汗を含んでおり、“天然の保湿クリーム”に例えられます。
◎角層細胞間脂質——角層の細胞と細胞の間には、「セラミド」などの角層細胞間脂質があり、スポンジのように水分をためる働きをもっています。
◎天然保湿因子——角層の細胞中にある天然の保湿成分で、水分を閉じ込めておく働きがあります。
これらの潤い因子は、年齢が上がるとともに減少(※)するため、加齢に伴って、皮膚は乾燥しやすくなってしまいます。
皮膚の表面を電子顕微鏡で見ると、健康な皮膚の表面は滑らかですが、乾燥した皮膚は、細胞間に隙間ができ、ひび割れているのがわかります。
潤い因子の減少や水分の蒸発により、皮膚が乾燥すると、暑熱や寒冷などの温度刺激、衣服がこすれるなどの機械的刺激、化学物質などの化学的刺激や細菌など、外部からの刺激を受けやすく、過敏な状態となります。すると、僅かな刺激でもかゆみを感じるようになります。
このような状態では、かゆみを感じる神経は、真皮(しんぴ)から皮膚の表面近くまで伸びてきて、外部からの刺激に素早く対応しようとします。すると、さらに刺激に過敏になり、普通は反応しないような刺激にも反応して、かゆみが生じることになります。
医療機関では、症状に合わせて、ステロイドの塗り薬や抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬ののみ薬などを組み合わせて治療を行います。薬を用いた治療で炎症やかゆみの症状が治まり、皮膚の状態が改善してきたら、保湿剤を用いた「スキンケア(維持療法)」が中心になります。
※ 乾燥が原因で起きる「老人性乾皮症」は、年齢が高くなるにつれて増える。
『NHKきょうの健康』2013年12月号より
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