マダニ感染症が北上中、全国で41人が死亡

マダニにかまれることで感染する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が、西日本から北上している。

 2013年に山口県で初の感染者が報告されて以降、主に 九州や中国、四国地方で確認されたのに続き、今年6月に京都で初めて感染患者が発生。3日には、北陸で初めて感染が確認された石川県志賀町の60歳代男性 が死亡した。マダニは秋にも活動するため、県は「森林や草むらに入る際は、肌の露出を控えてほしい」と呼びかけている。

 中国、四国地方以西で多く確認されていたSFTSウイルスの感 染者が今年6月、京都府で初めて確認された。感染した80歳代女性は、発熱と具合の悪さを訴えて入院し、血液検査でウイルスが検出された。女性はその後回 復し、退院した。石川県健康推進課は今月3日、マダニにかまれた志賀町の60歳代男性の感染を県内で初確認し、男性は経過観察の後、容体が悪化し、同日死 亡した。8月下旬から発熱や筋肉痛などを訴え、「マダニに刺された」と話していたという。同町はチラシやタウンメール、防災無線などで注意喚起した。

 国立感染症研究所(東京都)によると、SFTSは13年1月、国内で初めて確認された。マダニの活動が活発になる春から秋にかけて発症者が見られ、発熱や頭痛、筋肉痛、失語症などの神経症状、頸部けいぶリンパ節の腫れなどを伴う。特に高齢者は重症になりやすい。

 同研究所のまとめ(8月26日時点)によると、全国の累計患者数は151人で、うち41人が死亡。死亡者はいずれも50歳代以上で70歳代以上が33人を占める。有効な薬剤やワクチンは開発されていないのが実情だ。

 マダニの成虫は通常3~4ミリで、室内でよく見られるイエダニ より3~8倍大きく、血を吸うと1センチ以上に膨らむ。森林や草地、畑などの屋外に生息する。かまれても必ず発症するわけではなく、6日~2週間の潜伏期 間があり、発熱や下痢、吐き気などの症状が出ることがある。

 宮崎県と並んで最多の8人の死者が出た愛媛県は、原因調査と対 策に全力を挙げる。同県衛生環境研究所でマダニ約2000匹を検査したところ、マダニの種類によってウイルス保有率は6~31%に上り、全国調査の 5~15%より高いことが判明。チラシ配布や講習などを通して県民に啓発した結果、感染者数は、昨年度と一昨年度の計20人から、今年度は1人に減った。

 これまでに5人の死者が出た山口県は、全国の感染情報を県のホームページで発信している。同県環境保健センターの調しらべ恒明所長(58)は「西日本から範囲が拡大しているが、マダニ対策への理解を深めれば危険性は大きく減る」と話している。

 ◇マダニから身を守るための留意点

〈1〉草むらなどに入る時は、長袖、長ズボン、手袋、長靴、帽子、手袋を着用し、首筋にはタオルを巻くなど肌の露出を避ける。

〈2〉マダニが生息する草地ややぶ、森林などで長時間寝ころんだり、座ったりしない。

〈3〉帰宅の際、上着や作業着は家の中に持ち込まないようにする。粘着テープで服に付いたダニを取り除くなどする。

〈4〉かまれた場合、無理に引き抜くとマダニの顎などが皮膚内に残ることがあるため、取ったり潰したりせずに、すぐに医療機関を受診する。

(国立感染症研究所や県などへの取材に基づく)

2015年09月05日 13時09分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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